09.砂の末っ子







「おっ、我愛羅ー!」
「……ナルトか」


昼休み、ナルトと一緒に購買へ向かう途中、前を歩く後ろ姿にナルトが大きく手を振り声をかけた。
振り向いた赤髪の男子は、クールな無表情を崩さないまま、ナルトに小さく手を振り返す。


「お前も購買か?」
「おう。我愛羅もだろ?一緒に行こうぜ!」
「ああ」
「……あの、ナルト。この人は…?」
「あ、お前ら会うの初めてだってば?」


我愛羅と呼ばれた彼を上目に見ながら、ナルトの声にこくりと頷く。
目を囲むくらいの大きな隈に、額に書かれた刺青?らしき"愛"の文字。
同じ一年生のようだから、他校出身の人かな?
じっと見ていると、先程からぴくりとも動かぬ表情筋が私の方を向いた。
それと同時に、ナルトが彼を指差して、明るい抜けた声で紹介を始める。


「こいつは我愛羅、砂ノ里中学出身のやつだってばよ」
「…ナルト、砂中に友達いたんだ?」
「んー、まあ、昔ちょっとなー」
「ちょっと?」
「ちょっと色々あって、喧嘩して殴り合った仲だってばよ」
「な、殴り…!?」
「そんで仲良くなった!」
「なかよっ…、……あ、そう…」


ナルトから物騒な言葉が出てきたことに吃驚したが、二人はそんなこと気にも留めていないようだった。
ていうか、喧嘩して殴り合って仲良くなった、って……そんな漫画みたいな展開、本当にあるの?
青春?青春ってやつ?
よく分からないけど、男の子ってすごい。




「んで、こっちがナマエだってばよ!」
「あ、どうも。みょうじナマエです」
「……みょうじナマエ、か……」
「?はい」
「…よろしく」
「うん、よろしくね、我愛羅くん」


にこりと微笑んで手を差し出すと、我愛羅くんは少しだけ目を見開いて、戸惑いながら私の手を握った。


「……我愛羅でいい」
「そう?じゃあ、我愛羅、ね。私もナマエでいいよ」
「ああ、わかった。ところで、ナマエも寮に入っているのか?」
「うん?そうだよー」
「…部屋は、三年生と同室か?」
「え!うん、確かにテマリさん、三年生だけど…なんで分かったの?」


無表情を崩さぬまま、やはりな、と小さく呟く我愛羅。
その言葉の意味がわからずに再度問えば、あっさりと返答が返ってきた。




「テマリは、俺の姉だ」


……………………え?






「ええええええええぇっ!?」










砂の末っ子


(うそ、我愛羅って、テマリさんの弟なんだ…!?)
(因みに、間にもう一人兄がいる)
(でも三人とも全然似てないってばよ?)
(…うん…あんまり似てないね…)
(……)